2006年02月22日

[書評]容疑者Xの献身

ひさびさの書評。
が、『駄目社会人の本棚』と同内容だったりする。
別に原稿料もらえるわけでもないし、使いまわしてもいいよね。
というか、せっかく長い文章書いたのがもったいないというのが本音なわけですけど(笑)
こっちにしかいらっしゃらない方にもサービスを、と言い訳しておいて本題。

これは間違いなくある愛の形である。
たが決して純愛と呼べる類の何かではない。


今回は2005年版「このミステリーがすごい!」第一位を獲得し、先日発表された第134回直木賞授賞作である本書をとりあげたい。

容疑者Xの献身容疑者Xの献身
東野 圭吾

文藝春秋 2005-08-25
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最初に断っておきたいのだが、私は東野圭吾という作家の著作がなんとなく苦手だ。
本作も上記「このミス」での好評価がなければ、読まずにいたことは恐らく間違いない。

それでも、他の作品に圧倒的な差をつけたこの作品。
興味がないわけはない。

さて、本作は天才数学者でありながらさえない高校の数学教師に甘んじる石神が、隣人であり愛した女である花岡靖子が犯してしまった殺人を知ることから始まる。
彼女とその娘を守るため、石神はある策を講じて警察の目をくらまそうとした。

探偵役として登場するのは、石神の大学時代の友人・湯川。事件は互いに最もその才能を評価、尊重しあう二人の頭脳戦の様相を呈する。
この湯川という男、東野作品に登場したことがあるらしいので、ファンにとっては待望の再登場ということなのだろう。読んでないので知らないけど。

トリックは充分に意外性に富んでいるし、伏線の張り方も申し分ない。素直に読み進めれば、なるほど賞レースを勝ち抜いただけの魅力に富んでいる。面白いといってしまっていいだろう。
が、やっぱり東野作品との相性なのかなんとなく粗が目立つ。

最大の問題点はまさしく本作品の魅力の裏返しの部分。
天才vs天才の図を描こうとするあまり、「警察」がいかにも凡人代表のようになってしまっている。なんとかの一つ覚えのように唯一の容疑者への聞き込みを繰り返し、重要な場面ではまだ手の打ちようもあるだろうに必要な捜査をしない。
微妙な部分であるが、石神がどんな錯誤で警察を(そして読者を)ミスリードしているのかを、比較的早い段階で気づいてしまう読者も多いのではないだろうか?
ま、それでもトリック全容を見抜くのは容易なことではないし、気づいたところで本書の魅力が大きくそがれることはないのだけれど。ちょっと残念かもしれない。

あとは……癖のない文章で読みやすいんだけどねぇ。薄味すぎるのかも。

で、だ。
冒頭に書いたんだが、これってやっぱり純愛じゃないような気がする。
『偏執』って単語のほうがよほどふさわしい。本屋でも安易に感動大作とか書いてあって????とかなるくらい違和感がある。
泣きたい人とか純愛に癒されたい人は絶対に読むべきではないと思う。
しかし、こういう壊れた愛の形っていかにも天才型の人間がやりそうではあるな。

正直「このミス」2位の『扉は閉ざされたまま』のほうが好みだなぁ。

この著者のほかの作品はこちらから!

posted by MARS at 02:16 | Comment(1) | TrackBack(1) |
この記事へのコメント
トリックにはリアリティ&説得力があるのに
登場人物も、まあこういう思考回路を持つ天才はいるのかなって思えるのに
人間ドラマがあまりにも作り物っぽくて……。
事件を成立させるために、こじつけられた火曜サスペンス劇場的なドラマっていうか。
エンタメなんだから、それもありじゃんって言えばそれまでなんだけど。
読後、時間が経つに連れてもやもや感が増すんですよね。人の感情を、ここまで小道具扱いしていいのか? と。

そんな不満の中で、妙にリアリティを感じたのが、Xが50代のおじさんにして、自分のような醜い男が……云々と思うところ。
男の人って意外なほど自分の容姿を気にしてるって聞いたことあるので
へえ、そうかそんなふうに思うのかもねって納得しました。
でも、だから純愛、というのではあまりにも……。
Posted by 美也子 at 2006年02月27日 08:54
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またひとつ
Excerpt: 昨日、誕生日だからと自分を甘やかしてイッキ読みした本 東野圭吾「容疑者Xの献身」
Weblog: 真プライベート・ロード
Tracked: 2006-02-27 09:33
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