2005年01月14日

[書評]野ブタ。をプロデュース

【2005.07.28追記】
もしかしたらいるかもしれないドラマ情報を求めていらした方へ。
残念ながら、今のところ本ブログでドラマの情報は一切扱っていません。
あくまで原作となった書籍の書評を書いてあるだけです。

非常によくできた小説だと思いますので、ドラマの前に一読されたい方は下記からどうぞ。
なお、Amazonさんでは、1500円以上お買い上げの場合送料が無料になります。何かをあわせてご購入されることをオススメします。
ついでに、コメントを残していっていただけると非常にうれしいです。

以下、最初にエントリーした記事でーす。

学生ヒエラルキーにおけるエネルギー保存の法則
あるいは、
「最近コムロもつんくも本人見なくねぇ?」

文藝賞受賞作にして、芥川賞男性最年少受賞の期待もかかった本作。

4309016839野ブタ。をプロデュース
白岩 玄

河出書房新社 2004-11-20
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あらすじとしては、こんな感じ。

冷めた目線で自らと周りの人間を見つめながらも、クラスの人気者を「演じている」桐谷は、いじめられっこの転校生「信太」(野ブタ)をいじめられキャラの人気者へと仕立て上げていく。
彼のアイディアは次々と当たり、野ブタは次第にクラスの輪に溶け込んでいった。
だが、プロデュースも完成間近というところで、ある事件がきっかけになって桐谷自身がクラスから排斥される立場になってしまうのだった。


軽妙な語り口で、「That's 学生生活」ともいえる桐谷の生活を描いていて、気持ちよく読み進められる。

また、「自分は他とは違う」なんて考えは、特殊なようで実は陳腐。正常な男子中高生は結構誰もが考えていることだ。
だから平凡(に見える)な親に反発する。
俺はそうじゃない、と。

そう考えていくと、実は主人公の感性を表現しているように見えて、学生全般が共有する悩みをきちんと描いている。
すごい力だ。

途中で出てくる「(笑)」なんかを嫌がる人が多いみたいだけど、あれはあれでいいんじゃないだろうか?
ケータイ(電話ではなくメール)世代の一人称。おそらくは小説然とした文字よりも、液晶の中にしかない表現のほうに親しみがあるはず。そうした世代の一人語りなわけで、むしろ当然ともいうべき表現だと思う。実に今っぽい(って俺もそう年齢変わんないんだけど)。
計算して書いていたんだとしたらたいしたものじゃないかなぁ。

そういえば、同じ文藝賞受賞作の「インストール」(綿谷りさ)でも、作中の「(苦笑)」が話題になったことがあったはず。
文藝賞受賞作はこの2作しか読んでいないんだけど、賞全体の傾向なんだろうか?

残念に思うのは、桐谷の凋落の原因となった事件そのものには、野ブタが直接的には絡んでこないということだ。
一人を上げれば一人が下がる構図なので、人気者になった野ブタとの関わりの中で、自然に彼の素の部分が出てきてしまい、まわりが引いていく、っていう展開のほうがよりドラマティックになるんじゃないだろうか。

プロデュースに専念しすぎて、メッキがはがれていたことに気づかなかった、事件がきっかけではがれた部分から一気に積み上げたものがくずれた、というのはやや弱い気がする。個人的にだけど。

とはいえ、かなり面白くお勧めできる本。
値段も手ごろなので、ちょっとした片手間に読んでみて欲しい。

posted by MARS at 12:24 | Comment(3) | TrackBack(7) |
この記事へのコメント
わあっ、ありがとうございます。
>一人を上げれば一人が下がる構図
これは私、気づかなかった。ほんと、今の子はすごいわ。

私はこの作品、演じることで世の中と折り合いを付けていく、演じている自分と社会のからくりを21歳でここまで客観視できることがまず驚きでした。
文体は……不思議なことに中高年世代のほうに受けがいいみたい。単純におもしろがっているのかな。私も全然うるさくは感じなかった。
むしろこれだけ細かくねちっこく書き込める忍耐力に、若さゆえのスタミナを感じました。
Posted by 美也子 at 2005年01月14日 13:20
コメントありがとうございます。
構図についてですが、マクロな視点では桐谷と野ブタの関係になりますし、ミクロな視点では野ブタを落として笑いを取る=周りを持ち上げるという2点があるのかもしれません。
ミクロ視点については今思いついたことですけどw

忍耐力については、むしろくだらない事に執着して、細かく追及していく子供っぽさなのではないかなぁ、と。
僕も20台半ばですけど、こういう感性ってありますし。
若い人にそこが受けないのは、普段見慣れてる見方・考え方・文体をわざわざ書籍で読まされることなのかもしれません。
Posted by MARS at 2005年01月14日 13:49
>若い人にそこが受けないのは

やっぱりですか……。そんな気がしてました。
やばいぞオバな私。 たびたびすみません。
Posted by 美也子 at 2005年01月14日 14:22
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